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こきんしゅうまきのご

古今集巻之五

山本 周五郎

「文藝春秋」文藝春秋新社、1958(昭和33)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,482 字 · 43 页

青空文庫

というのは、河森と丹野から来る手紙の内容が、永井のことを伝えると同時に、かれら二人がだんだん不和になってゆく、という状態をも示し始めたことだ。丹野は四百余石の留守役、河森は八十石あまりの小姓組頭で、身分にはかなりひらきがある。少年時代からの親しい友人ではあっても、年が経って互いに家庭を持つと、それだけでも、昔のままのつきあいが続くという例は多くはない。まして身分や役目に差があれば、その関係もいっそうむずかしくなるだろう。

――永井はそれをはっきりさせたのだ。

永井主計が二人のあいだにはいったことは、二人を昔の友情でむすびつけるよりも、逆に現在の隔りをはっきりさせたのだ、私はそう考えたのである。

河森は丹野を非難して、「彼は永井を堕落させる」と書いて来た。しきりに茶屋遊びへさそい、酒や女に溺れさせた。国許とは違って江戸は広いから、家中の眼を気にする必要はない。金さえあれば遊ぶのにことは欠かないし、遊ばせかたもうまい。おまけに留守役は料理茶屋などにも顔がきくので、田舎育ちの永井をひきまわし、遊びを仕込むのはたやすいことだ。おれは永井に三度ばかり意見したが、彼は耳にもかけないし、三度めには喧嘩になってしまった。