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こきんしゅうまきのご
古今集巻之五
山本 周五郎
「文藝春秋」文藝春秋新社、1958(昭和33)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,482 字 · 43 页
「おんなじことなのよ」と女中のおちよが云った、「親切でも薄情でも、こっちがしんから惚れてしまえば、そんな差別はなくなるんじゃないの」
「そうらしいわ」とお袖が云った、「男と女が惚れあう、ということは同じなのに、一つとして同じような惚れかたがない、みんなそれぞれに違っているんだから妙なものだわ」
主計は盃をみつめていて、それからふと顔をあげた、「そうだ、そんな歌があったぞ」
「ああ驚いた」お袖が持っている盃を片手で庇いながら云った、「ときどきになるとびっくりさせるのね、ひどい方」
たしかにそんな歌があった、と主計は思った。なにかで読んだことがある、秋の露は一と色であるのに、草や木の葉をちぢの色に染める、というような意味であった。どこかで読むか聞くかしたのだ。どんな歌ですか、と小光が訊いた。ちょっとうたって聞かせて下さいな、あたし知っているかも知れない。ねえ、ちょっと聞かせて、と小光が云った。
「聞かせてもいいが」と主計が云った、「おれと寝るか」
「ほんと」と小光が云った、「嘘でしょ」
「嘘だ」と主計が云った。
「きまってるわ、憎らしい」小光は主計の腕にしがみついた、「罪よ、なあさん」