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こだいこくごのおんいんについて
古代国語の音韻に就いて 他二篇
橋本 進吉
橋本進吉『古代国語の音韻に就いて 他二篇』。同一底本的分册已合并为一书。收入:古代国語の音韻に就いて、国語音韻の変遷、駒のいななき。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 94,329 字 · 188 页
ただここに疑問なのは「ヒ」であります。他の行では甲類の「キ」「ミ」が用いられているのに「ヒ」だけは乙類が用いられて、同種類の活用の同じ活用形には、甲乙二類の中、いつも同じ類のものがあらわれるという例を破っておりますが、よく見ると、ハ行上一段の語尾の「ヒ」を万葉仮名で書いた確実な例は、未然形と連用形とにしかないのでありまして、終止形以下は、奈良朝のものには仮名で書いた、まぎれのない例がないのであります。ただ訓でそう読んでいるだけであります。奈良朝においてハ行上一段活用の動詞としては「乾る」「嚏る」の二語だけでありますが、それが活用した確かな例は、未然・連用の二つの活用形だけで、それにはどちらも「ヒ」の乙類の仮名が用いてあるのであります。それでは未然・連用に「ヒ」の乙類を用いる活用は他にないかというに、ちょうど上二段活用があります。さすれば、これらの語は、上二段活用でなかったかとも考えられるのでありますが、『日本書紀』巻七景行天皇十二年の条を見ると、「乾此云レ賦」とあって「乾」を「フ」と読ませてあります。さすれば「乾」は「フ」と活用したとも考えられます。