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たいふうのこ

台風の子

小川 未明

「日本の子供」1941(昭和16)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,662 字 · 8 页

青空文庫

僕も、死んだら台風になるよ。」

「君、そうしたら、僕の家の頭の上を通るだろう。」

「ああ、きっと通るよ。そのときは、君、見ておいで!」

「あはは……。」と、二人は、声をたてて笑いました。

そんな冗談をいった龍夫は、その年の秋の末、寒くなろうとするおり、急性肺炎にかかって、ほんとうに死んでしまいました。

一年は、刻々と時計の針の進むごとく、また、いつしか季節がめぐってきた。

ラジオは、天気予報の時間に、台風の近づいたことを警告していました。源吉は、龍夫のいた時分のことを思い出した。なんで彼のいったことを忘れよう。

前ぶれとして、いつものごとく、驟雨がやってきました。それは、銀の細引きのように太い雨が降り注ぎました。破れたといからは、滝津瀬と水が落ちました。屋根の上は風のためにしぶきをあげているし、木々の大枝がもまれにもまれています。

「愉快だな。」

源吉は、じっとしていられなくなって、小降りになるのを待ち、雨マントをかぶって外へ出ました。

「川の水が、去年のようにいっぱいになったろう。」

彼は、龍夫といっしょに立ってながめた、橋の方へいこうとしました。ちょうど役所の退けごろで、雨の中を人々が往来しています。