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あいえんきえん
合縁奇縁
佐々木 邦
「キング」大日本雄辯會講談社、1950(昭和25)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,349 字 · 23 页
僕は月給一万五千円、三十歳の青年にして、恵まれた立場だ。東京の生活に慣れた昨今、同僚の奥さんの同級生というのに心を惹かされ始めた。その面影を思い浮べると、又桜の花が咲いたように明るい気持になる。
考えて見ると、僕を迷わせた女性が今までに三人ある。第一は随明寺の錦子さんだ。これは手に入る範囲まで来ていたのに、此方が坊主になりたがらなかった為め、見す/\逃がしてしまった。因みに正覚君も無事で随明寺を継いでいる。第二は尾崎君の妹の町子さんだ。これもお互に憎からず思っていたのだが、今度は此方の名前が坊主臭い為めに先方で躊躇していたところへ邪魔が入って、それきりになってしまった。三度目が増山澄子さんだ。同僚河合君の家で偶然落ち合ったのが切っかけで交際が始まった。作州津山の素封家の娘で、目白の女子大学卒業生だ。
「もう郷里へ帰る筈だけれど、出て来た序に此方で縁談を定めようと思って、叔母さんのところに滞在しているんだ。申込めば屹度纒まる」
と河合君が勧めてくれた。澄子さんは河合夫人と同級生のみならず、同郷で家が隣り同志だから、姉妹のように親しくしている。
「しかし僕は君も知っている通り、中学校を出た丈けだからね。