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どうきょにんかふう

同居人荷風

小西 茂也

「新潮 第四十九卷 第十二號」1952(昭和27)年12月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,026 字 · 17 页

青空文庫

荷風先生をわが陋屋の同居人(?)として迎える光栄を有したのは昭和廿二年一月七日から翌年十二月廿八日までの約二ヶ年の間であった。年少より秘かに敬愛していた先生に昼夜親炙することを得たのは、僕の生涯の喜びであり、つぶさにその間、僕は先生を観察し、その言行を毎日微細にノートしてきた。大判のノートで四冊にも及ぶその「荷風先生言行録」は、僕にとって古い恋文の如くであり、貴重な文献でもあるが、過去の日記や恋文を焼くという感傷癖のある僕は、秋晴の今日、庭の落葉と共にこの「言行録」も焼却することにした。灰燼にそれが帰する前、ここにその一端を書き留めておきたいと願うのも、果して僕の未練であろうか。荷風先生は大いに迷惑とせられるであろうが、くれぐれも御海容を乞いたい。

昭和二十二年八月一日。読売新聞に蔵書を少女に売られた荷風老のゴシップ記事でる。(もと同宿しておりしO家にのこせる書籍や原稿を、市川の古本屋に売払われたるため、先生は警察に訴え出でたるなり。)もっと詳しく這般の事情を素破抜いてくれたらよいにと先生甚だ残念がる。先方にては先生が発狂せりと訪客に語りおるためなり。