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どうきょにんかふう

同居人荷風

小西 茂也

「新潮 第四十九卷 第十二號」1952(昭和27)年12月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,026 字 · 17 页

青空文庫

九月九日。近頃チブスの注射証明書を携えねば電車に乗れず。但し六十歳以上の者は差支えなしとあり。七十一の先生曰く「わしは六十にも見えないくらい若いからどうしよう。市役所へ行って証明書でも貰ってくるかな……」

九月十日。X・Y氏は会った感じが水平社の人のようで愉快でない。しかし菊池の弟子にしてはましの方かな、と先生の毒舌例の如し。

九月十一日。先生昨夜半、テノールで歌を歌いおりしと女房ども失笑しおれり。寂しくて眠れなくて歌でも歌いしものならん、余暗然とす。鼻唄でないところに先生の面目あり。先生下痢のため終日臥床。枕許にて雑談、三田派の連中を評してH・Sの荷風論(展望所載)は彼の転向を示すプロパガンダとして用いられたるものといい、井汲清治氏はむかし荷風の小説は下らぬと書きしゆえ、今度の荷風全集月報にそれを再録したしと申さる。其他後藤末雄氏の話、S・Dがポーランドの女と同棲しておりし話など。

九月十六日。大根値上げになったゆえと称し、先生部屋代を五十円あげ百五十円出さる。当方辞退す。それではと帰りかけしもまた無理に金をおいてゆきたり。一二月頃五十円の部屋代いつしか三倍となる。