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どうほう
同胞
豊島 与志雄
「中央公論」1924(大正13)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,713 字 · 32 页
いつまでも膝をくずさずに坐り続けて、満足げに盃を挙げてる祖父の様子が、何だか馬鹿げているように思われた。眼付から言葉付まで、四方八方へ気兼ねをしてるらしい祖母の様子が、何となくはがゆく思われた。人のよい温和な笑みを浮べながら、押しても動きそうにないほどどっしりと構え込んでる母の様子が、変に愚かしく思われた。今この真中に、弟を不意に連れて来たら……などと考えると、妙に面白く可笑しくなってきた。
「恒夫、」と祖父が突然声をかけた、「何を一人で笑っている。ここへおいで、今日は特別に一杯飲ましてあげるから。」
恒夫は一寸躊躇したが、思い切って祖父の方へ寄っていって、盃三杯ばかり続けざまに飲んでやった。祖父は首を縮こめて、頓狂な顔付をした。
「ほほう……お父さんの子だけあって、なかなか飲めると見えるな。……が、もうよい。それくらいがよい所だ。」
祖父から盃を取上げられたのをしおに、恒夫はふと立上って、次の室の仏壇の前へ行って、しきりに香を焚いた。香の煙の向うから、父の霊が笑ってるように思われた。そしてまた、弟ばかりでなしに、兄や姉や妹や、そんなのを沢山方々に生ましておいてくれてるかも知れない、などと馬鹿馬鹿しいことを考えて、自分で自分に面喰った気持になった。