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めいじんじごく
名人地獄
国枝 史郎
「サンデー毎日」1925(大正14)年7月5日~10月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 149,286 字 · 301 页
九郎右衛門の居間であった。あらゆる珍奇な器具類が、隙間もなく飾ってあった。すなわち過ぐる夜偶然のことから、銀之丞がこの家を訪れた時、呼び込まれたところの部屋であった。その部屋は四方厚い壁で、襖や障子は一本もなく、壁の四隅に扉を持った、四つの出入り口が出来ていた。そうして四つのその口からは、四つの部屋へ行くことが出来た。
さてその四つの部屋であるが、東南にある一室には、九郎右衛門の病身の妻、お妙というのが住んでいた。またその反対の西南の部屋には、娘のお艶が住んでいた。さらに東北の一室には、これも病身の伜の六蔵が、床についたままで住んでいた。最後の西北の一室には、別荘番の丑松と、護衛の男達が雑居していた。
以上五つの部屋によって、本邸の一郭は形作られていたが、それら部屋部屋の間には、共通の警鐘が設けられてあって、異変のあった場合には、知らせ合うことになっていた。
この本邸を囲むようにして、独立した四つの建物があった。城でいうと出丸に当たった。これも低い平屋づくりで、本邸と比べては粗末であったが、しかし牢固という点では、むしろ本邸に勝っていた。四つとも同じような建て方で、その特色とするところは、矢狭間づくりの窓のあることと、四筋の長い廻廊をもって、本邸と通じていることとであった。