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めいじんじごく
名人地獄
国枝 史郎
「サンデー毎日」1925(大正14)年7月5日~10月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 149,286 字 · 301 页
いかさまこいつはいい耳で、知らせてくれて有難い。ゆっくり茶でも飲んで行きな」
一つ二つ世間話があって、やがて松五郎は帰って行った。その後から平八も、仕度をして家を出た。
さすがの玻璃窓の平八も、鼓賊ばかりには手古摺っていた。鼓の音を目あてとして、尋ねあぐんだそのあげく、うまく池ノ端で探りあてたはいいが、湯島天神へ追い込んで、さていよいよ捉えてみると、何んのことだ観世銀之丞! それ以来方針を一変し、髪を切られた小屋者はないかと、その方面から探ることにしたが、ねっから目星しい獲物もなかった。で、すっかり悄気返り、「鼓賊はどうでも俺の苦手だ。ひどい間違いのないうちに、手を引いた方がよさそうだ」などと思いあぐんでいたところであった。
で、松五郎の話にも、大して気乗りしてはいないのであった。「どうせアブレるに違いない、今度アブレたらそれを機会に、一切探索にはたずさわるまい。頭を丸めて法衣を着て、高野山へでも登ってやろう。ああああ浮世は面白くねえ」
こんなことを思いながら、彼はポツポツ歩いて行った。
阪東米八の掛け小屋は、かなり立派で大きかった。絵看板も美しく、「名人地獄」