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めいじんじごく

名人地獄

国枝 史郎

「サンデー毎日」1925(大正14)年7月5日~10月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 149,286 字 · 301 页

青空文庫

ところがさすがの名探索も、こんどばかりは荷が勝って、後手ばかり食らっているやつさ。それを俺は知ってるんだ。うん、そうさ、ある理由からな。ところで俺はあの爺に五年前から怨みがあるんだ。で、そこで敵討ちよ。つまり彼奴のトンマぶりを、そっくり芝居に仕組んだあげく、彼奴の眼の前にブラ下げたって訳さ。胸に堪える五寸釘! そいつがこれだ。『名人地獄』だ!」

「どんな怨みだか知らないけれど、つまらない事をしたものね」米八は浮かない顔をした。

「それはそうと、ねえお前さん、秀郎さんの鼓賊のつくり、何から何までお前さんじゃないか」

「俺が注文したからよ」次郎吉はそこでニタリとした。

「どうしてだろう? ねえお前さん」

「それも玻璃窓に見せたかったからさ」

「なんだか妾にゃあ解らない」きまずそうに眉をひそめ、「とにかく妾にゃあこの芝居は、気になることばかりで面白くないよ」

「それじゃ明日から芸題替えだ」次郎吉は煙管のホコを払い、「もう玻璃窓に見せたんだから、俺の目的はとげられたってものさ。いつ替えたって惜しかあねえ」

「アラそう、それじゃ替えようかしら」

「それがいい、つき替えねえ」