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めいじんじごく

名人地獄

国枝 史郎

「サンデー毎日」1925(大正14)年7月5日~10月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 149,286 字 · 301 页

青空文庫

紙に包んで差し出した。

「安いものさ、滅法安い」チョロリと袖へ掻き込んだが、「オイ和泉屋、羽根が伸ばせるなあ」

しかし次郎吉は返事をしない。

「お前にとっては苦手の玻璃窓、そいつが江戸から消えたとあっては、ふふん、全く書き入れ時だ。盆と正月が来たようなものだ。なあ和泉屋、そんなものじゃねえか」

宗俊はネチネチみしみしとやった。

鼓賊と鼠小僧は同一人

「旦那」と次郎吉は探るように、「いったいどこへいったんですい?」

「え、誰が? 玻璃窓か?」

「あの好かねえじじく玉で」

「どうやら大分気になるらしいな。聞かせてやろうか、え、和泉屋」

「ききてえものだ。聞かせておくんなせえ」

「が、只じゃあるめえな」

「十両あげたじゃありませんか」

「これか、こいつあさっきの分だ。一話十両といこうじゃねえか」

「厭なことだ、ご免蒙りましょう」

「よかろう、それじゃ話さねえまでだ」

「旦那も随分あくどいねえ」とうとう次郎吉は憤然とした。「悪党のわりに垢抜けねえや」

「お互い様さ、不思議はねえ」

宗俊はノコノコ歩き出した。

「旦那旦那待っておくんなさい」

未練らしく呼び止めた。

「何か用か、え、和泉屋、止まるにも只じゃ止まらねえよ」