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めいじんじごく

名人地獄

国枝 史郎

「サンデー毎日」1925(大正14)年7月5日~10月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 149,286 字 · 301 页

青空文庫

と唄にまで唄われていたものである。その忠次だというのであるから、ハーッと驚くのももっともであろう。

「おお、そうか、忠次であったか、わしもおおかたその辺であろうと、実は眼星をつけていたが、いよいよそうだと明かされて見ると、妙に懐かしく思われるな。それはそうとさて忠次、よい構えを見つけたな」

「へい、これは恐れ入ります。ほんの自己流でございまして、お恥ずかしく存じます」

「剣の終局は自己流にある。一派を編み出し一流を開く、すべて自己の発揮だからな。いつその構えは発明したな?」

「島の伊三郎を討ち取りました時から、自得致しましてございます」

「しかし忠次その構えでは、お前も随分切られた筈だが?」

「仰せの通りでございます」こういうと忠次は右腕を捲った。五、六ヵ所の切傷があった。「かような有様でございます」それから彼は左腕を捲った。七、八ヵ所の切傷があった。「この通りでございます」それから彼はスッポリと、両方の肌を押し脱いだ。胸にも肩にも左右の胴にも、ほとんど無数の太刀傷があった。「ご覧の如くでございます」それから彼は肌を入れた。

「ううむなるほど、見事なものだな」