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めいしょうまんげつ
名娼満月
夢野 久作
「富士」1936(昭和11)年4月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,840 字 · 37 页
おなじ道楽の一蓮托生といったような気持も手伝って、昔の恋仇の意地張はどこへやら。心から手を取り合って奇遇を喜び合うのであった。蒲公英の咲く川堤に並んで腰を打ちかけ、お宮の背後から揚る雲雀の声を聞きながら、銀之丞が腰の瓢と盃を取出せば、千六は恥かしながら背負うて来た風呂敷包みの割籠を開いて、焼いた干鰯を抓み出す。
「満月という女は思うたよりも老練女で御座ったのう」
「さればで御座ります。私どもがあの死にコジレの老人に見返えられましょうとは夢にも思いかけませなんだが……」
なぞと互いに包むところもなく、黄金ゆえにままならぬ浮世をかこち合うのであった。
「それにしても満月は美しい女子で御座ったのう」
「さいなあ。今生の思い出に今一度、見たいと思うてはおりまするが、今の体裁では思いも寄りませぬ事で……」
「……おお……それそれ。それについてよい思案がある。この三月の十五日の夜には島原で満月の道中がある筈じゃ。今生の見納めに連れ立って見に参ろうでは御座らぬか。まだ四五日の間が御座るけに、ちょうどよいと思いまするが……」
「さいやなあ。そう仰言りましたら何で否やは御座りましょうか。