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『わがはいはねこである』じょうへん

吾輩は猫である

夏目 漱石

一只没有名字的猫,蹲在主人身边看尽人间百态,吐槽起来比人类还犀利。跟着它的眼睛,你会发现这个世界有多荒唐又有趣。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 322,123 字 · 643 页

青空文庫

して見れば猫たるものはいかなる盛徳の猫でも彼の邸内で決して油断は出来ぬ訳である。しかしその油断の出来ぬところが吾輩にはちょっと面白いので、吾輩がかくまでに金田家の門を出入するのも、ただこの危険が冒して見たいばかりかも知れぬ。それは追って篤と考えた上、猫の脳裏を残りなく解剖し得た時改めて御吹聴仕ろう。

今日はどんな模様だなと、例の築山の芝生の上に顎を押しつけて前面を見渡すと十五畳の客間を弥生の春に明け放って、中には金田夫婦と一人の来客との御話最中である。生憎鼻子夫人の鼻がこっちを向いて池越しに吾輩の額の上を正面から睨め付けている。鼻に睨まれたのは生れて今日が始めてである。金田君は幸い横顔を向けて客と相対しているから例の平坦な部分は半分かくれて見えぬが、その代り鼻の在所が判然しない。ただ胡麻塩色の口髯が好い加減な所から乱雑に茂生しているので、あの上に孔が二つあるはずだと結論だけは苦もなく出来る。春風もああ云う滑かな顔ばかり吹いていたら定めて楽だろうと、ついでながら想像を逞しゅうして見た。御客さんは三人の中で一番普通な容貌を有している。ただし普通なだけに、これぞと取り立てて紹介するに足るような雑作は一つもない。