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『わがはいはねこである』じょうへん

吾輩は猫である

夏目 漱石

一只没有名字的猫,蹲在主人身边看尽人间百态,吐槽起来比人类还犀利。跟着它的眼睛,你会发现这个世界有多荒唐又有趣。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 322,123 字 · 643 页

青空文庫

君あの鼻に是非通知してやるがいい、この頃は団栗博士の夢でも見ているかも知れない」

鈴木君は寒月の名を聞いて、話してはいけぬ話してはいけぬと顋と眼で主人に合図する。主人には一向意味が通じない。さっき鈴木君に逢って説法を受けた時は金田の娘の事ばかりが気の毒になったが、今迷亭から鼻々と云われるとまた先日喧嘩をした事を思い出す。思い出すと滑稽でもあり、また少々は悪らしくもなる。しかし寒月が博士論文を草しかけたのは何よりの御見やげで、こればかりは迷亭先生自賛のごとくまずまず近来の珍報である。啻に珍報のみならず、嬉しい快よい珍報である。金田の娘を貰おうが貰うまいがそんな事はまずどうでもよい。とにかく寒月の博士になるのは結構である。自分のように出来損いの木像は仏師屋の隅で虫が喰うまで白木のまま燻っていても遺憾はないが、これは旨く仕上がったと思う彫刻には一日も早く箔を塗ってやりたい。

「本当に論文を書きかけたのか」と鈴木君の合図はそっち除けにして、熱心に聞く。

「よく人の云う事を疑ぐる男だ。――もっとも問題は団栗だか首縊りの力学だか確と分らんがね。とにかく寒月の事だから鼻の恐縮するようなものに違いない」