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『わがはいはねこである』じょうへん

吾輩は猫である

夏目 漱石

一只没有名字的猫,蹲在主人身边看尽人间百态,吐槽起来比人类还犀利。跟着它的眼睛,你会发现这个世界有多荒唐又有趣。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 322,123 字 · 643 页

青空文庫

なぜ湧いた?――なぜと云う質問が出れば、今一応考え直して見なければならん。――ええと、その訳はこうである。

吾輩の眼前に悠然とあらわれた陰士の顔を見るとその顔が――平常神の製作についてその出来栄をあるいは無能の結果ではあるまいかと疑っていたのに、それを一時に打ち消すに足るほどな特徴を有していたからである。特徴とはほかではない。彼の眉目がわが親愛なる好男子水島寒月君に瓜二つであると云う事実である。吾輩は無論泥棒に多くの知己は持たぬが、その行為の乱暴なところから平常想像して私かに胸中に描いていた顔はないでもない。小鼻の左右に展開した、一銭銅貨くらいの眼をつけた、毬栗頭にきまっていると自分で勝手に極めたのであるが、見ると考えるとは天地の相違、想像は決して逞くするものではない。この陰士は背のすらりとした、色の浅黒い一の字眉の、意気で立派な泥棒である。年は二十六七歳でもあろう、それすら寒月君の写生である。神もこんな似た顔を二個製造し得る手際があるとすれば、決して無能をもって目する訳には行かぬ。いや実際の事を云うと寒月君自身が気が変になって深夜に飛び出して来たのではあるまいかと、はっと思ったくらいよく似ている。