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『わがはいはねこである』じょうへん

吾輩は猫である

夏目 漱石

一只没有名字的猫,蹲在主人身边看尽人间百态,吐槽起来比人类还犀利。跟着它的眼睛,你会发现这个世界有多荒唐又有趣。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 322,123 字 · 643 页

青空文庫

いくら個人主義が流行る世の中だって、こう町々に我儘を尽くされては持主の迷惑はさこそと思いやられる、主人もここに鑑みるところあって近頃は大に訓練を与えて、出来る限り系統的に按排するように尽力している。その熱心の功果は空しからずして昨今ようやく歩調が少しととのうようになって来た。今までは髯が生えておったのであるが、この頃は髯を生やしているのだと自慢するくらいになった。熱心は成効の度に応じて鼓舞せられるものであるから、吾が髯の前途有望なりと見てとって主人は朝な夕な、手がすいておれば必ず髯に向って鞭撻を加える。彼のアムビションは独逸皇帝陛下のように、向上の念の熾な髯を蓄えるにある。それだから毛孔が横向であろうとも、下向であろうとも聊か頓着なく十把一とからげに握っては、上の方へ引っ張り上げる。髯もさぞかし難儀であろう、所有主たる主人すら時々は痛い事もある。がそこが訓練である。否でも応でもさかに扱き上げる。門外漢から見ると気の知れない道楽のようであるが、当局者だけは至当の事と心得ている。教育者がいたずらに生徒の本性を撓めて、僕の手柄を見給えと誇るようなもので毫も非難すべき理由はない。