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『わがはいはねこである』じょうへん

吾輩は猫である

夏目 漱石

一只没有名字的猫,蹲在主人身边看尽人间百态,吐槽起来比人类还犀利。跟着它的眼睛,你会发现这个世界有多荒唐又有趣。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 322,123 字 · 643 页

青空文庫

それだからこの通り先日僕が白木屋へ注文したフロックコートを着ているのさ」と注意する。なるほどフロックコートを着ている。フロックコートは着ているがすこしもからだに合わない。袖が長過ぎて、襟がおっ開いて、背中へ池が出来て、腋の下が釣るし上がっている。いくら不恰好に作ろうと云ったって、こうまで念を入れて形を崩す訳にはゆかないだろう。その上白シャツと白襟が離れ離れになって、仰むくと間から咽喉仏が見える。第一黒い襟飾りが襟に属しているのか、シャツに属しているのか判然しない。フロックはまだ我慢が出来るが白髪のチョン髷ははなはだ奇観である。評判の鉄扇はどうかと目を注けると膝の横にちゃんと引きつけている。主人はこの時ようやく本心に立ち返って、精神修養の結果を存分に老人の服装に応用して少々驚いた。まさか迷亭の話ほどではなかろうと思っていたが、逢って見ると話以上である。もし自分のあばたが歴史的研究の材料になるならば、この老人のチョン髷や鉄扇はたしかにそれ以上の価値がある。主人はどうかしてこの鉄扇の由来を聞いて見たいと思ったが、まさか、打ちつけに質問する訳には行かず、と云って話を途切らすのも礼に欠けると思って