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『わがはいはねこである』じょうへん

吾輩は猫である

夏目 漱石

一只没有名字的猫,蹲在主人身边看尽人间百态,吐槽起来比人类还犀利。跟着它的眼睛,你会发现这个世界有多荒唐又有趣。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 322,123 字 · 643 页

青空文庫

この時主人は、昨日紹介した混沌たる太古の眼を精一杯に見張って、向うの戸棚をきっと見た。これは高さ一間を横に仕切って上下共各二枚の袋戸をはめたものである。下の方の戸棚は、布団の裾とすれすれの距離にあるから、起き直った主人が眼をあきさえすれば、天然自然ここに視線がむくように出来ている。見ると模様を置いた紙がところどころ破れて妙な腸があからさまに見える。腸にはいろいろなのがある。あるものは活版摺で、あるものは肉筆である。あるものは裏返しで、あるものは逆さまである。主人はこの腸を見ると同時に、何がかいてあるか読みたくなった。今までは車屋のかみさんでも捕えて、鼻づらを松の木へこすりつけてやろうくらいにまで怒っていた主人が、突然この反古紙を読んで見たくなるのは不思議のようであるが、こう云う陽性の癇癪持ちには珍らしくない事だ。小供が泣くときに最中の一つもあてがえばすぐ笑うと一般である。主人が昔し去る所の御寺に下宿していた時、襖一と重を隔てて尼が五六人いた。尼などと云うものは元来意地のわるい女のうちでもっとも意地のわるいものであるが、この尼が主人の性質を見抜いたものと見えて自炊の鍋をたたきながら、今泣いた烏がもう笑った、今泣いた烏がもう笑ったと拍子を取って歌ったそうだ、主人が尼が大嫌になったのはこの時からだと云うが、