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『わがはいはねこである』じょうへん

吾輩は猫である

夏目 漱石

一只没有名字的猫,蹲在主人身边看尽人间百态,吐槽起来比人类还犀利。跟着它的眼睛,你会发现这个世界有多荒唐又有趣。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 322,123 字 · 643 页

青空文庫

「おい、御這入り」と云ったぎり坐っている。

「御客ですか」と寒月君はやはり顔半分で聞き返している。

「なに構わん、まあ御上がり」

「実はちょっと先生を誘いに来たんですがね」

「どこへ行くんだい。また赤坂かい。あの方面はもう御免だ。せんだっては無闇にあるかせられて、足が棒のようになった」

「今日は大丈夫です。久し振りに出ませんか」

「どこへ出るんだい。まあ御上がり」

「上野へ行って虎の鳴き声を聞こうと思うんです」

「つまらんじゃないか、それよりちょっと御上り」

寒月君はとうてい遠方では談判不調と思ったものか、靴を脱いでのそのそ上がって来た。例のごとく鼠色の、尻につぎの中ったずぼんを穿いているが、これは時代のため、もしくは尻の重いために破れたのではない、本人の弁解によると近頃自転車の稽古を始めて局部に比較的多くの摩擦を与えるからである。未来の細君をもって矚目された本人へ文をつけた恋の仇とは夢にも知らず、「やあ」と云って武右衛門君に軽く会釈をして椽側へ近い所へ座をしめた。

「虎の鳴き声を聞いたって詰らないじゃないか」

「ええ、今じゃいけません、これから方々散歩して夜十一時頃になって、上野へ行くんです」