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『わがはいはねこである』じょうへん

吾輩は猫である

夏目 漱石

一只没有名字的猫,蹲在主人身边看尽人间百态,吐槽起来比人类还犀利。跟着它的眼睛,你会发现这个世界有多荒唐又有趣。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 322,123 字 · 643 页

青空文庫

「なるほど。しからば謙遜して、定石にここいらから行こう」

「定石にそんなのはないよ」

「なくっても構わない。新奇発明の定石だ」

吾輩は世間が狭いから碁盤と云うものは近来になって始めて拝見したのだが、考えれば考えるほど妙に出来ている。広くもない四角な板を狭苦しく四角に仕切って、目が眩むほどごたごたと黒白の石をならべる。そうして勝ったとか、負けたとか、死んだとか、生きたとか、あぶら汗を流して騒いでいる。高が一尺四方くらいの面積だ。猫の前足で掻き散らしても滅茶滅茶になる。引き寄せて結べば草の庵にて、解くればもとの野原なりけり。入らざるいたずらだ。懐手をして盤を眺めている方が遥かに気楽である。それも最初の三四十目は、石の並べ方では別段目障りにもならないが、いざ天下わけ目と云う間際に覗いて見ると、いやはや御気の毒な有様だ。白と黒が盤から、こぼれ落ちるまでに押し合って、御互にギューギュー云っている。窮屈だからと云って、隣りの奴にどいて貰う訳にも行かず、邪魔だと申して前の先生に退去を命ずる権利もなし、天命とあきらめて、じっとして身動きもせず、すくんでいるよりほかに、どうする事も出来ない。