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『わがはいはねこである』じょうへん

吾輩は猫である

夏目 漱石

一只没有名字的猫,蹲在主人身边看尽人间百态,吐槽起来比人类还犀利。跟着它的眼睛,你会发现这个世界有多荒唐又有趣。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 322,123 字 · 643 页

青空文庫

主人と東風君は妙な眼をして視線を鰹節の上に注いでいると、寒月君はやがて口を開いた。

「実は四日ばかり前に国から帰って来たのですが、いろいろ用事があって、方々馳けあるいていたものですから、つい上がられなかったのです」

「そう急いでくるには及ばないさ」と主人は例のごとく無愛嬌な事を云う。

「急いで来んでもいいのですけれども、このおみやげを早く献上しないと心配ですから」

「鰹節じゃないか」

「ええ、国の名産です」

「名産だって東京にもそんなのは有りそうだぜ」と主人は一番大きな奴を一本取り上げて、鼻の先へ持って行って臭いをかいで見る。

「かいだって、鰹節の善悪はわかりませんよ」

「少し大きいのが名産たる所以かね」

「まあ食べて御覧なさい」

「食べる事はどうせ食べるが、こいつは何だか先が欠けてるじゃないか」

「それだから早く持って来ないと心配だと云うのです」

「なぜ?」

「なぜって、そりゃ鼠が食ったのです」

「そいつは危険だ。滅多に食うとペストになるぜ」

「なに大丈夫、そのくらいかじったって害はありません」

「全体どこで噛ったんだい」

「船の中でです」

「船の中? どうして」

「入れる所がなかったから、ヴァイオリンといっしょに袋のなかへ入れて、船へ乗ったら、その晩にやられました。