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ごせいげん

呉清源

坂口 安吾

「文学界 第二巻第一〇号」1948(昭和23)年10月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,333 字 · 11 页

青空文庫

呉氏が警察へ出頭してジコーサマ一行を貰い下げた。それがこの日の前夜のことで、一行はネグラを求めて、いずこともなく立ち去った。そのまゝ、消息が知れないのである。

横浜だのどこだのと読売の記者が諸方へ飛んだが、行方が知れぬ。呉氏応援のため上京というのも名目だけのことで、ジコーサマも、迫害がひどくて、津軽辺の仮神殿にも住めなくなったらしいという話であった。上京の神様一行も、総理大臣、内務大臣、ミコ、総勢五名であり、現在では、それが神様ケンゾクの全部の由、落ちぶれ果てたものらしい。もっとも、計画的に諸所へ散在、潜伏させた信徒の細胞もあるとかの話で、その原因も、食糧難、住宅難などの結果によるらしく、生活危機は人間どもの問題だけではないのである。ジコーサマの生活危機はまさに深刻をきわめているから、神様の生活を実質的に一人の腕で支えている呉氏の立場も一様のものではなく、律義名題の呉氏も、神様のためには、人間の約束を破りかねない危険があった。それで、読売が慌てた。係りの黒白童子の苦悩、一時にやつれ果て、食事も完全に喉を通らず、坐ってもいられず、ウロウロしているばかりであった。