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ごせいげん
呉清源
「文学界 第二巻第一〇号」1948(昭和23)年10月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,333 字 · 11 页
スタスタ、スタスタ、観戦の何十名という人たちが、まだ観戦の雰囲気からさめやらぬうち、アッという間に、真ッ先に居なくなっていた。
まったく、もう、自分一方の流儀のみ、他人の思惑などは顧慮するところがない。
将棋の升田八段は、復員服(呉八段は国民服)に兵隊靴、リュックをかついで勝負に上京、傲岸不屈、人を人とも思わぬ升田の我流で押し通しているようであるが、呉清源にくらべると、まだまだ、心構えが及ばぬ。
私は昨年十二月、木村升田三番勝負の第一局の観戦に名古屋へ行った。木村に連勝のあとであり、順位戦に一位となったあとでもあり、木村何者ぞ、升田の心は、いさゝか軽卒であり、思いあがっていた。
対局前夜に、私が相手になったのも悪かったが、彼は酒をのみすぎた。それから私と木村、升田三人で碁をやり、升田は酔いがさめて、睡れなくなり、殆ど、一睡もできなかったらしい。私も一睡もできなかった。酔っ払いは、酔ったら、すぐ、ねるに限る。酔いがさめては、ねむれない。木村は、酒は自分の適量しか飲まず、おそくまでワアワア騒ぐと良く睡れるたちで、自分の流儀通りに、ワアワア碁をやって、良く睡った。