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てつがくのげんだいてきいぎ
哲学の現代的意義
戸坂 潤
「唯物論研究 第六〇、六一号」1937(昭和12)年10月、11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,718 字 · 45 页
国民の生んだ文学で、その国民が喜ぶ文学だから、国民文学と呼ぶのだというのは、何も不都合はないが、又何の中味もない主張だ。だから浅野晃氏などという評論家は国民文学という観念に対する反対者は、民衆とか大衆とか云わずに国民という言葉を使うのが気に入らないのだろうと考えているらしい。同じ国民の内に、階級的な区別と対立があり、それが文学の精神に決定的な特徴と論理とを与えているという世界的事情に、少しも触れようとしないような「国民文学論」が、反対されているのだということは、知らないような風をして見せるのである。誰も日本国民や日本民族が階級だなどとは云わないから、心配は要らないのである。ただ国民や民族の内部に階級対立が事実あるのを正直に認識せよというのだ。そういう認識をハッキリさせた「国民文学」ならば、傾聴に値いしよう。そういう国民文学はもはや国民文学ではなくて世界文学だろうからだ。
私はなぜトゥルゲーネフのインテリが漱石(や鴎外)のインテリに較べて、比較にならぬ程国民文学的な「タイプ」を打ち出していなければならないのか、呑み込めない(「国民文学論」はそういうことを主張するのだが)。