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といにこたえて
問に答えて
宮本 百合子
「文芸通信」1934(昭和9)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,571 字 · 9 页
は自覚していなかったと告白するような、根深い社会性や社会の各層に属する人々の生活感情を反映することが出来るのであろうと思う。
一人のインテリゲンツィア作家が歴史の必然的の力によって階級的な移行をした場合、その作家の中にはその必然を自身の要求として理解し勇しく新しい困難の中に進んでいこうという決心を中心として、さまざまの感情は確に身についたものとして持っている。しかし自分が新たに所属した階級に生れ育ち闘っている人々がその生活の中から与えられてもっている心持ちを、いきなりそのものとして持つことは殆んど絶対に不可能なことである。新しくプロレタリヤ作家にふみ出した私のような作家の場合には、このことが当然いえるのであって、若し私が筋を書いた小説でなく本当に小説らしく心をも捕えてそれを生かしている小説を書き度いと考えたならば、尠くともある時期は、多くの困難と努力で、階級的な大小の実際的訓練を経て、自分自身の感情をも叩き上げなければならない。一本のステッキというものに就いて或は赤皮の靴というものに対して、もと私がそこに感じたのは、せいぜい趣味としてそこに現れているそれ等のものの持主の生活環境への想像に止っていたが、今はそうではない。