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うそアつかねえ

嘘アつかねえ

山本 周五郎

「オール読物」文藝春秋新社、1950(昭和25)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,523 字 · 24 页

青空文庫

……男は悲しい、可哀そうなもんだ。だから、だからおらあ嬶をはり倒す、拳骨でも平手でも、……この阿魔ッふざけるな、蹴ころがしてやることもあるさ」

まるっこい顔をふくらませて力むのだが、人の好さそうな尻下りの眼は、そんなときふと異様な光りを帯びて、彼の言葉にかなりな実感を与えた。

寒くなりだしてから、宵のうちとか夜半過ぎなどに、夜鷹の紛れこんで来ることがあった。一人は躯のだぶつくような肥えた女で、もう一人はまだ十五くらいの、病的に痩せた、殆んど男の子のような躯つきをしていた。肥えた女はお吉といい、少女はお琴という名だった。初めは二人いっしょにはいって来て、爺さんに焼酎を貰い、お吉が少女の裾を捲って太腿の傷の手当をしてやった。……客の奪いあいをして、相手の女のひもに短刀で突かれたのだと、お吉が爺さんに話した。少女は手当の終るまでひっきりなしに饒舌っていた。傷を焼酎で洗われたりしたら痛いだろうのに、眉をしかめもしなかった。

「あたいああいうの好きさ、へたな文句なんぞ云わずに、いきなり、ずぶっとやりゃアがった、それがいい気持だったらないの、躯じゅうがぞウっとしちゃった、今でもお臍の下ンところがぴくぴく動いてるわ、おなかの奥のほうの此処ンとこ、ねえ、此処ンところになにがあるの、このぴくんぴくん動くものなによウ、姐さん