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しじゅうふわく
四十不惑
佐々木 邦
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1952(昭和27)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,633 字 · 26 页
押しも押されもしない。同期に卒業した連中の会へ出ると、僕あたりが一番いゝのらしい。
「子供がないのか? うまくやっている。それなら一生愛人と同棲しているようなものじゃないか?」
と皆羨ましがる。
僕も家内が一人きりだから生活がラクだということを認めている。子供がほしくないこともないけれど、なければないで諦めなければならない。
「僕のところは呑気ですよ。家内が一人きりですから簡単です」
と僕は言う。しかし妻はこの表現がよろしくないと言う。
「家内と二人きりですからと仰有って戴きます。家内が一人きりですからと仰有ると、いかにも二人ほしいようじゃありませんか?」
「成程ね。そうも取れるな」
「取れますとも」
「それじゃ気をつけよう」
僕は争わない。僕達は恋愛結婚をして今日ある。その頃のことを思えば、仇疎かに出来ない。しかし妻はいつまでも求婚当時の心持でいて貰いたいというのだから、要求が大き過ぎる。何分十二年たっている。妻は僕より五つ下で三十六、僕は四十一、不惑を一つ越してしまった。
文書課にはタイピストが八名いる。皆妙齢だから、所謂若気の過失を起さないように監督するのも僕の役目の一つだ。