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こくさいさつじんだんのほうかい
国際殺人団の崩壊
海野 十三
「新青年」1931(昭和6)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,767 字 · 31 页
唯一人の例外は、鬼村博士であった。博士だけは、直立して、柱の蔭に硝子の雨を避けていた。警官連中は入口の扉を開きはしたが近寄れないので、どうしたものかと犇き合っていた。
そのところへ、いきなり飛び上って来た怪漢がある。警官が取押えようとする手をはらいのけて、勇敢にも室内へ躍り込んだが柱のかげにひそんでいる鬼村博士の姿を目懸けて飛びかかって行った。博士は悲鳴をあげて救いを求めた。怪漢は、博士の顔を床の上におしつけると、博士の大きな鼻をねじり廻して、何だか綿のような白いものを、指先で抜きとったようであった。それはどうやら特種の薬品を浸みこませた濾気器で、博士が唯一人毒瓦斯に耐えていたのも、そのせいであるかのように思われた。そこへ警官連中が上から折重って怪漢をひきはなし、高手小手に縛りあげてしまった。
博士は身震いして、ヨロヨロと立ち上ったが、そこに引きすえられた怪漢の顔を見ると、
「椋島君、お気の毒じゃな」と、薄気味のわるい笑顔をズッと近付けた。
翌朝の新聞紙は、一斉に特初号活字、全段ぬきという途方もない大きな見出しで、「希代の科学者鏖殺犯人遂に捕縛せられる。