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こくさいさつじんだんのほうかい

国際殺人団の崩壊

海野 十三

「新青年」1931(昭和6)年5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,767 字 · 31 页

青空文庫

4

「呀ッ」と小さい叫声をたてた。この婦人は鬼村博士の一人娘の真弓子にちがいなかった。無論彼女は、いち早く、椋島の姿をみとめたのである。だがその異様ないでたちの彼を何と思って眺めたであろうか、スカートの短いところでカムフラージュされるとしても、生憎彼にしなだれかかっていたコケットのおキミを見落す筈はなかった。これに対して、椋島は遂に一言も声を出さなかったし、むしろ顔をそむけたほどであった。しかし、何うやら気になるものと見えて、真弓子の行く後を振りかえった。彼は真弓子がこちらを振りむいたのを見て慌てて頭を立てなおした。

4

其の夜の六時、電気協会ビルディングの三階第十号室には我国の科学方面に於けるさまざまな学会の会長連が、円卓を囲んでずらりと並んでいた。その人数は十七名もあろうか。電気学会長である帝大工学部長の川山博士の白頭や、珍らしく背広を着用に及んでいる白皙長身の海軍技術本部長の蓑浦中将や、テレヴィジョンで有名なW大学の工学部主任教授の土佐博士の丸い童顔や、それからそれへと、我国科学界の最高権威を残りなく数えることができるのであった。勿論、その座長席には鬼村博士のやや薄くなった大きな頭がみえていた。