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よせ

圓太郎馬車 正岡容寄席小説集

正岡 容

正岡容『圓太郎馬車 正岡容寄席小説集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:寄席、円太郎馬車、円朝花火、初看板。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 147,226 字 · 295 页

青空文庫

の代わりに使う小さな鈴玉をつけて、

「ソレ一昨日来い」

と放してやった。

ホウホウの体で鼠はすぐさま逃げていったが、さて翌晩から海老団治が一杯やっていると、天井三界に響きあり。

チリリリリリン、まぎれもなく昨夜の鼠だ、そいつを聞くたび、ニヤッと天井を見上げては、

「ホ、奴さん、御座ったな」

またそれを肴に当分飲みつづけた。

「うふッ、あんな……あんな粋な奴ってあるだろうか。ああ俺、ほんとに世のなかが明るくなった」

ほんとうに今松はそう思った。今松とちがって親はあったが、海老団治の師匠の梅雀は三年前に没り、それ以来の二度の師匠を持たず、独立で商売をしている境遇の寂しさも、今松には相触れるものがあった。

夜の寄席の帰りに交うだけでは足りなくなって、お互いに朝から行ったりきたりした。

会えば必ず海老団治は、必ず大真打たちの悪口を言った。

「なったないな贅六ども」

「オイオイ海老やんちょっと待って」

ふき出しそうに今松は、

「贅六贅六って、じゃお前はいったいどちらのお生まれだてえことになる」

「違いない」

素直に海老団治は微笑んで、

「私も贅六やけど、私はつまり贅六の場違いや」