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よせ

圓太郎馬車 正岡容寄席小説集

正岡 容

正岡容『圓太郎馬車 正岡容寄席小説集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:寄席、円太郎馬車、円朝花火、初看板。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 147,226 字 · 295 页

青空文庫

そうすると当然の結果として、あとへは肴のなくなった御飯ばかりのお鮨が残る。紋兵衛はそこで海苔を一枚焼かして、その飯だけの鮨を海苔に包んで食べてしまった。

「なんと私のすること無駄がないやろが――」

紋兵衛はこう自慢するのである。

なんてケチな野郎だろう。

驚きやがったろうな江戸の鮨屋。

お腹のなかで今松はあざ笑った。

急がしい掛け持ちのとき、席亭が市内電車の切符をくれた。それを決して使わないで、しじゅう次の席亭まで駆け出していき、その切符を溜めておいた。三十枚溜まったところで、なんとその席亭へ売りにいった。

これも紋兵衛の話だった。

天神祭のとき、みんなで揃いの半纏を着て、天神橋のほうへ舟を漕ぎ出すことになった。そのとき自分一人は決して揃いをこしらえず、悠々と紋付袴で乗り込んでいった。

そうしたら、誰よりもいちばん立派に見えて、橋の上から眺めていた見物たちが、

「あの紋付の人がいちばん偉いのやろ」

と噂した。

この話も得意になって紋兵衛語るところのひとつだった。

「千日前に釣堀おまっしゃろ、金魚釣りの釣堀。あこの釣糸ほん弱いやッちゃ。俺、先途、太い太い義太夫の三味線糸持ていってな、うまいことあの糸と取り換えてしもうて釣ったったんや。