轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

よせ

圓太郎馬車 正岡容寄席小説集

正岡 容

正岡容『圓太郎馬車 正岡容寄席小説集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:寄席、円太郎馬車、円朝花火、初看板。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 147,226 字 · 295 页

青空文庫

グイとひと息に呑み干してしまうと、今度は今松の手から二合瓶をもらい、空缶のほうを渡して、それへお酌をした。

数時間後の夜汽車の中だった。

あるだけのものを融通してやっと買えた大阪行の切符二枚と正宗の二合瓶。

あとは二人とも、三文もなかった。

それにしてもこの二合瓶買いは買ったものの、お猪口がなかったので。

「困ったなあ」

今松が言ったら、

「なんの猪口くらい」

とっさの機転で海老団治は歯磨缶の歯磨を、汽車の窓からパッと表へぶちまけた。夜目にも薄桃色の粉が、残りなくちっていった。そのあと、空缶を洗面所へ行って洗ってきた。

「どうやこれ。明日の朝、お互いに口さえ磨かん気やったら、結構、盃の役目をする」

自慢そうに海老団治は笑った。

「よッ、えらい御趣向」

手を打って今松は嬉しがった。

かくて思いもかけない歯磨缶の献酬がはじまったのであるが、したたかに酌がれた缶のお猪口。へりで唇を切りそうな薄気味悪さを感じながら、ひと口あおったとたんに今松は、

「ペッペッ」

急いでお酒だけ呑込んだあと、いつまでもいつまでも辺りへ唾を吐きちらした。

底へこびりついていた歯磨がひと固り舌へくっついてきたのだった。