轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

よせ

圓太郎馬車 正岡容寄席小説集

正岡 容

正岡容『圓太郎馬車 正岡容寄席小説集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:寄席、円太郎馬車、円朝花火、初看板。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 147,226 字 · 295 页

青空文庫

しまった。

絶望した圓朝は、

「もう私は、東京の寄席へはいっさい出ないから」

と、当時、新宿北町に結んだ草庵円通堂に閉じこもり、禅三昧に俗塵を避けた。

わずかに、翌二十五年九月、大阪浪花座へ一枚看板で乗り込んでいったが、帰京後、まもなく彼は人力車から振り落されひどい負傷をした。いよいよ世の中が面白くなかった。

いくら禅学に心身を打ち込もうとしても心乱れて、次第に白髪が増えていき、見違えるほど老い込んでいった。そのたび、圓朝はしずかに目をつむった。そして、あの花火の晩のことを考えた。不思議にあの晩のことを考えると、十も二十も若返ってくる思いがされた。

明治三十二年月十月、ついに日本橋の大ろじで「牡丹燈籠」を長演したのが最後の高座となり、その年の暮れから彼は、枕も上がらぬ病の床に臥してしまった。年がかわると冬から春へ、やがて夏へ、とって六十二歳の圓朝は、いよいよ衰弱の多きを加えた。

進行性麻痺兼続発性脳髄炎との長い病名で、すでに脳の中枢をやられていたので、ときどきもののけじめがわからなくなった。

八月三日の日暮れ近く――。

下谷広徳寺近くの圓朝の家では、よく繁った樫の葉蔭にみんみん蝉が啼き立てていた。