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とさのくにばしら
土佐の国柱
山本 周五郎
「読物文庫」1940(昭和15)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,375 字 · 35 页
「こんな事が度重っては、土民たちがお家の御威光を軽んじ奉るのも道理だ。……これ以上こんな事を繰返していてどうするか」
「思切ってやるべき時だと思う!」
「そうだ、その時なんだ」
庄野九郎兵衛の突っ掛かるような声に、喜兵衛は強く頷いて云った。
「大通院さまは御臨終に、斧兵衛は功労格別の者ゆえ、われ亡き後も、我儘勝手を許すと仰せられたと承る。老職方がその御遺言に遠慮して、なにも出来ぬのなら、我々が代って、お家の禍根を断つべきだ」
「もうそれ以上、理非の糺明は要らぬでしょう」
「まあ待て、……」
渡辺勝之助の急き込むのを抑えて、
「もう一つだけ云うことがある」
と喜兵衛は膝へ手を置いた。「……是は誰が云ったと名を指すことは出来ぬ。お側小姓の一人とだけ申すが、……大通院さまは御他界の数日前、夜半に斧兵衛どのを御前へ召され、其方には追腹を許す冥途の供せよ。……そう仰せられたとのことだ」
「斧兵衛に……追腹のお許し」
「殉死のお許しを!」
みんな水を浴びたように息をひいた。
「お人払いでお側には誰もいなかった。しかし小姓の一人がお襖際で、たしかに聴き取ったのだ。年少ではあり、余りに重大なことで、人にこうと話すことも出来なかったが……と、つい一昨日、元服の祝儀の席で拙者に告白したのだ」