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とさのくにばしら
土佐の国柱
山本 周五郎
「読物文庫」1940(昭和15)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,375 字 · 35 页
「それは怖いな。あいつは無鉄砲だからな」
「己は冗談を云いに来たんじゃないぞ」
十郎左は立ちあがって、
「もういちど云うが、高閑の娘を貰うことはよく考えた方がいい。己は貴公の親友を以て任じているが、いざという場合には……遠慮はしないぞ」
「駄目だよ、……貴公には斬れぬ」
「斬れぬと?」
「貴公の太刀筋は悪くない」
小弥太は微笑しながら云った。
「悪くないどころか、恐らく家中で十郎左と三本に一本の勝負の出来る者は、渡辺の勝之助くらいのものだろう。……けれど、小弥太を斬ることは出来ないさ」
「池藤、……貴公、己と立合う積りか」
「なるべくなら、そんなことになりたくないものだ」
十郎左は立ったまま、とび出しそうな眼で小弥太を睨めおろした。……そして、大きく首を捻りながら、
「己にはもう、すっかり分らなくなった」
と投げるように云って立去った。
十郎左を玄関まで送って戻ると、庭から、そっと家来の岡倉金右衛門があがって来た。……まだ、十九歳であるが、顔だちも心までも、老成した青年で、右足が少し躄だった。
「貫島さまは、怒ってお帰りでございましたな」
「見ていたのか」
「直ぐにも抜くかと思いました。