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もぐら
土竜
佐左木 俊郎
「文章倶楽部」1926(大正15)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,991 字 · 21 页
「ああ。火を気付けでな。」
「俺も、兄つあんと行ぐは。」と一人で土を弄って遊んでいたよしが、土煙の中から飛び出してヨーギの方へ駈けて行った。
「うむ。うむ。」と梅三爺は、それにも返事を与えた。
「よく飯が炊けますね。」竜雄は心からの驚きの表情を示して。
「なあに、母親がいねえもんだから……」
「それにしても、よくまあ……。やっぱり百姓の生活はいい。僕なんかも、小さい時から百姓をさせられたら……」――彼は自分の、恵まれ過ぎた幼時の生活を考えて見ずにはいられなかった。「僕なんかの小さい時は、全く泣くこときり知らなかったんだからね。」
「学校さだけは、もう少し、六年生まででも、尋常科だけでも卒業させでえと思ったのでがすが、何しろ私等は、帳面一冊買ってやんのだって、なかなか大変なのでがすからは……ほんでも、四年生までやったのでがすげっとも、手紙一本書けねえんでがすから……。市平どこさ、手紙やりでえど思っても、その手紙が書けねえって言うんでがすから……」
梅三爺の訴えは涙含ましかった。
「市平君は、今どこにいるね?」
「あの放浪者は、今、北海道の、十勝の……先達手紙寄越して、表書きはあんのでがすが。