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ざいがくりゆう

在学理由

豊島 与志雄

「日本評論」1938(昭和13)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,167 字 · 21 页

青空文庫

これはどういうことであろうか……云々。

そうなると、矢杉は益々即答が出来かねるのであったが、その問題よりも、相手が半島生れの学生だということの方に心を惹かれて、その風貌を見守った。矢杉がこれまで識ってる半島生れの学生には、骨の角立ったそして鈍重な感じのする風貌の者が多く、中にごく僅か、白皙明敏だという感じの風貌の者があったが、今の相手の学生は、その少数な後者の一人で、而も、どこかとぼけたような微笑さえ浮べているのであった。

その微笑の影に、矢杉はこちらも微笑で応じて、句読点の問題は自分にもよく分らないから文学者にでも聞いたがよかろうと、率直に答えた。それから話は、西洋文には句読点のみならず種々の意味を持つ記号が多くあるのに、日本文や諺文や漢文にそれらの記号が少いのは、どういうわけだろうかとの疑問にとび、矢杉の知人で、創作もやれば翻訳もやってる吉村なんか、文字の誤植よりも句読点の誤植の方がよほど気になると平素云っていることなどが、もちだされた。そして吉村の意見でも聞いてみないかというようなことから、矢杉は相手の学生の名前の李永泰というのを知り、また更にその顔を眺めたのだった。