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ちじょう

地上

島田 清次郎

地に潜むもの

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 175,250 字 · 350 页

青空文庫

それはよい思案と言わなければなるまい。彼女等は各自に自分達のなじみを招びよせた。招ばれた男達は無銭で遊べることを「光栄」と考えてやって来た。そして、時にはこっそり裏座敷で目立たない遊興をして行った。目立たない、こっそり隠れた遊興の面白さが人々に知られると、暫くの間に、廓の家々では、歌舞音曲の響こそしないが、平常のように客は出入するようになってしまったのである。

「あれえ、およしなさいよ、ほんとうにおよしなさいよ!」

と奥座敷で菊龍のあげる誇張した嬌声を、「菊ちゃん、あんまり声が大きすぎますよ」とお幸が戒しめる。人々はいつしか、あの一とき感じた死の厳粛さを忘却してしまったのである。形式だけの哀しみの表現がようやく盛んになりかけているときにおいて――このように、天子の崩御は春風楼にとってよい結果をもたらしたわけであるが、またこの一事実が冬子やお光母子の運命に波のうねりのように重大な関係をもたらしたのである。

八月中頃のある夜、いつものように春風楼の茶の間には電燈の輝く下に粧った女達が集まっていた。夏の夜風が明けはなした窓からそよ/\と流れ入る。

「じゃ、いってまいります」