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ちじょう
地上
島田 清次郎
地に潜むもの
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 175,250 字 · 350 页
お光は彼女の青春が来ない少女の時代に対してはそう大した記憶がなかった。
「ほんとにお前さんと綾さんとはよく似ていましたよ。二人が眠っている寝顔を見るとどちらがどちらか分らない位でした。でも、そんなときにはどっちか一人を起こせば分りました。お前さんであれば起こされてはじめはぼんやりしているが、わたしだと分れば穏やかに笑ったけれど、綾子さんだと厳しく怒るように瞳をみはって、それからひきつったように顔を歪めましたっけ」とお里がお光に二人の少女時代の話をした。
少女時代にお光が唯一つ忘られない事実がないでもなかった。それは村の貧しい小作人の一人(背の低い陰鬱な、貧乏のために結婚をせずに一生いた男だという)がある夏の夜、村の娘を無理に関係をつけてしまった。娘は月足らずの男の児を生んだ。その児を仕方なしにその男が育て上げねばならなかった。成長するにつれてその少年はどこか普通の少年と異常で、何よりも労働を嫌がった。野良へ追い出しても草原に寝そべって青い空に吸われるように見入っていて草一つろうとしない。彼が十六の年、彼の親の小作人は「乾鰮のように」黒く瘠せ枯れて死んでしまった。