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ちじょう
地上
島田 清次郎
地に潜むもの
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 175,250 字 · 350 页
これほど熱烈に明徹に燃焼した日が地上にあり得ようかと思われた。地上の物象が燃え上らないのがお光には不思議に思われた。この日は、二、三年前から兄の容一郎が英語を勉強するために金沢の市街へ往復するようになってから親しくなったその市街の大きい商人の一人息子である大河俊太郎が、新造の和船を北海道の方から廻航して来る道すがら、大川村の浜へ寄るはずになっていた。俊太郎は兄の容一郎とは気が合うというものか、彼から泊りがけに来ることもあり、容一郎が俊太郎の家へ泊りがけに行くこともあった。そうして彼と綾子とが恋し合っていることは兄もお光も認識し、また好意をもって許しあっている事実でもあった。そうした俊太郎が二十四の青年でありながら、一隻の船を廻航してわざわざ大川村の浜へ寄ることは容一郎兄妹にとっては嬉しいことであった。容一郎とお光は浜への焼けた村道を歩いて行った。綾子は誘われたが来なかった。そうして彼女の来ないところに彼女と俊太郎との恋があった。容一郎とお光はそうした綾子の心を思いやっていた。
その日、歩いてゆく二人の上に光った空はぴり/\顫え、一面の青田から陽熱に蒸された若い稲の強烈な匂いがお光達の感覚を圧迫した。