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ちじょう

地上

島田 清次郎

地に潜むもの

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 175,250 字 · 350 页

青空文庫

母は金沢の生まれであると信じさせなくてはいけない。また父は山国の人間であると言わねばならない。この二つのことを心の根に据えて一生懸命勉強して、お前が常々言ってるように『真の政治家』になることを母は(生命にかけて)祈っていよう――」

こうした「母の戒め」に今また「冬子の戒め」が重なるのである。幾重もの秘密、幾重もの「見えざる運命」の重荷を負わねば生きてゆかれぬ自分。平一郎は暗い気にならずにいられなかった。まっくらな闇に迷いこむような佗しい気が平一郎に起きた。無論、そうした「迷い」のもう一つ底には充実した輝かな力が根を張ってはいたけれど。

「旦那様の力をいれていらっしゃることはそれはもう大したものなんですから。もう御自分で学校まで探して下さっているんですから、平一郎さんも少し苦労なことがあってもそこは忍耐して下さるでしょう、ね。わたし達のように十分な家庭に生まれなかった者はどうしたって一度は辛い涙を噛みしめてじいっと忍従していなくちゃならないのです。それは辛いことが多いのですよ。死ぬよりも辛いことがあるのですよ。それをじいっと忍んでいるうちに、平一郎さん、人間の骨が鍛えられるのじゃなくって? ね、わたしだってはじめて悲しいということを知ってからもう十年近い年月が経っていても、未だに毎日泣かない夜はないのですもの