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ちじょう
地上
島田 清次郎
地に潜むもの
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 175,250 字 · 350 页
お幸の円い厚みのある声が店の方で聞えた。
「米子ちゃん、市子ちゃん、こら、お臀をこんなに出して、夜中に誰かが持っていったらどうするの。お起きなさいよ、こら!」ぴた/\小さい妓等の臀を叩くらしい音と、寝ぼけざましの哄笑が一斉に聞えた。店の女達はみな眼をさました。
「時ちゃん、自分の床だけは上げるといいわ」
「はい/\」
「昨夜はおかしな夢ばかり見ていたっけ」
「鶴子さんの夢なら大抵知れていますわ」
「そうでしょうよ――可愛いい男の夢ですよ」
お幸がふだんの意気な単衣に博多の下帯をしめて、楊枝を使いながら出て来た。怜悧な彼女のよく動く生き生きした眼が、お光の上にじっと暫く止まっていたが、説明を求めるように冬子の方へ向いた。冬子はそのお幸の眼が嫌いでならなかった。怜悧な打算強いその眼、男が一度その眼にうたれてすぐある誘惑を胸に連想するようなその眼、冬子にはその眼が嫌いで堪らなかった。大抵の場合は冬子は沈黙した。お幸は冬子を高慢ちきだと言った。もしお幸が自分の男に対する或る種の自信が弱いか、毎月末における花高が冬子よりも下ででもあったなら、彼女の蛇のような邪智は冬子に対して悪辣さを発揮したか知れなかったが、冬子の客はある少数の範囲に限られていたし、それに彼女は夜泊まりすることが嫌いだったので、そしてその嫌いが大抵の場合押し通せる