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ちじょう
地上
島田 清次郎
地に潜むもの
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 175,250 字 · 350 页
程に彼女の力量が認められていたので、冬子は花高はお幸に及ばなかった。そしてそれが彼女のためによかった。が、そうした冬子でも今は黙していてはお光が立ちゆかない。
「お幸さん、お早う」
「お早う」
「あのいつもお話しておったでしょう。大河の小母さんよ。お仕事に来て戴くことになりましたのよ。またどうぞよろしくね」
「そうなの。どうぞよろしく」
お幸はお光をちらっと見た。彼女はお光が地味な、少し勝手のちがった、征服しようにも手がかりのないような多少不可解な四十女に見えた。しかし彼女の才気と聡明が、そして廓の女以外に対する無知が彼女の心を安心させていた。お光はそこに小造りなぴち/\と跳ねあがっている新しい小魚のような美しいお幸を見た。
「ゆっくりしていらっしゃるといいわ、小母さん」
お幸は洗面所のほうへ去った。
「お茂さん、その紙屑を拾ってゆくといいわ」
お茂が肌着を脱いで単衣にきかえて茶の間へ出てこようとするのを、時子が細帯をぐる/\巻きしめながらお茂を呼びとめた。その呼び止め方の気随さがお茂の心に痛みを与えた。
「何を」
「その紙屑ですよ」
時子がお茂の足下を指さした。