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じごくかいどう
地獄街道
海野 十三
「モダン日本」1933(昭和8)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,814 字 · 22 页
そうに違いない」
私はもう坐っても立っても居られなかった。それはミチ子をめぐる彼と私との暗闘が最後的場面へ抛り出されたのだ。断然たる敵意であった。砲弾のような悪意だった。
「はッはッはッ」と辻永は軽く笑った。「まア落着いたがいいだろう。あの酒は僕が飲ませたわけではなく、もともと君の前にミチ子が持ってきたのを、君がとりあげて飲み乾しただけのものじゃないか。僕がなにを知るものかネ。唯、地獄街道の道案内を聞かせてやっただけじゃないか。最後の注意をするが、もうソロソロ催してくるから、助かりたかったら……」
と、そこまで云ったとき、辻永は襲われた様に声を嚥んでガッと眼を剥いた。そして椅子からピンと立ち上ったが、痛そうな顔をして腰をかがめて下腹をおさえ、急いで手洗室の方へ駈け出した。
「戸をあけてくれ。あけてくれ」
「貴方、ちょっとお待ちなすって」とその日は月曜だというのに珍らしくいつものように出ていた主人が駭いて駈けつけた。「唯今お客さまがお使いになっていますから、しばらく、しばらくお待ち下さい。しばらくどうぞ」
「ぎゃーッ」主人に遮られて、辻永は獣のような声をあげた。