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さかぐちりゅうのしょうぎかん
坂口流の将棋観
「神港夕刊新聞」「九州タイムズ」発表年月日未詳
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,966 字 · 4 页
私は将棋は知らない。けれども棋書や解説書や棋士の言葉などから私流に判断して、日本には将棋はあったが、まだ本当の将棋の勝負がなかったのじゃないかと思う。
勝負の鬼と云われた木村前名人でも、実際はまだ将棋であって、勝負じゃない。そして、はじめて本当の勝負というものをやりだしたのが升田八段と私は思う。升田八段は型だの定跡を放念して、常にたゞ、相手が一手さす、その一手だけが相手で、その一手に対して自分が一手勝ちすればよい、それが彼の将棋の原則なのだろうと私は思う。
将棋の勝負が、いつによらず、相手のさした一手だけが当面の相手にきまっているようであるが、却々そういうものじゃなくて、両々お互に旧来の型とか将棋というものに馴れ合ってさしているもので、その魂、根性の全部をあげてたゞ当面の一手を相手に、それに一手勝ちすればよい、そういう勝負の根本の原則がハッキリ確立されてはおらなかった。これをはじめて升田八段がやったのだろうと私は思う。
私の文学なども同じことで、谷崎潤一郎とか志賀直哉とか、文章はあったけれども、それはたゞ文章にすぎない。私のは、文章ではない。何を書くか、書き表わす「モノ」