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かいとのはなし

垣内の話

柳田 国男

「民間伝承十二卷八・九號」1948(昭和23)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,985 字 · 14 页

青空文庫

かりに将来の村構成に、これを利用し得るというまでは望まれぬとしても、何ゆえにこれが幾つかの改造を経つつも、今までなお残っているのかということは眼前の不審であり、その疑問は今からでもこれを釈くことができる。そうしてその方法は民俗学のものであった。今までまったく知らなかった多くの事実が、わずか一年足らずの間にももう大分心づかれ、それを我々は実地に就いて、何度でも確かめる事ができるだけでなく、その比較によってなお隠れたものを、見つけ出すことが許されるのである。たとえば自分等が当初予想していたのは、垣内は中世の荘園解体期を世盛りとして、いったんは国土の広い面積に行き渡った制度であって、後ようやく存立の意義を失うに至ったけれども、別に根こげに変更しなければならぬほどの必要もなかったために、あるものは名を存し、または外形の一部ばかりを、今に伝えているだけであろうということであった。ところがほんの一部の比較によって、この想像はほぼ覆ってしまったのである。もしも現在二三の土地において、垣内の特徴のごとく見られている事実が、ともに中世の垣内の残形に過ぎぬとすると、これらを綜合していた本の姿というものは、よほど茫漠として把捉しがたいものになってしまうのである。