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まど

堀辰雄集 新潮日本文学16

堀 辰雄

堀辰雄『堀辰雄集 新潮日本文学16』。同一底本的分册已合并为一书。收入:窓、あいびき、雉子日記、卜居、「美しかれ、悲しかれ」、木の十字架、楡の家。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 58,906 字 · 119 页

青空文庫

だけを持ち込んだ。これは女房の奴には内証だが、私はこの屋根裏部屋にときどき閉じ籠っては、全く一人っきりで、昔の自分にそっくりそのままの自分に返って、心ゆくまで自分の青春に訣別を告げようという陰謀。――が、その代り、階下の、女房と共同の部屋には、女房に買って貰ったトルストイ全集だの、ジャック・シャルドンヌの「祝婚歌」や「クレエル」などを積み重ねて、一方、大いに結婚生活者の心理研究もしようという感心な心がけさ。……当分、そんな二種類の自分が、私の裡でお互いに勝手悪そうに同居しているだろうが、それはまあ仕方があるまい。慾を云えば、かえっていつまでもこうしたままの通りでいてくれた方が自分には何だか面白そうだ。

こんな手紙を君に書きながら、私がいま思い出しているのは、二三日前にも読み返したリルケが「マルテの手記」の中でフランシス・ジャムらしい詩人のことを書いている一節だ。――「ああそれは何という幸福な運命であろう。先祖代々の家の、物静かな部屋に坐って、家付きの落ちついた家具に取囲まれながら、まぶしいほどの新緑の庭で山雀が啼きかわしたり、又、遠くの方で村の時計の鳴るのを聞いたりしているのは。