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はか
墓
宮本 百合子
「サンデー毎日」1926(大正15)年7月1日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,972 字 · 10 页
遺骸に敬意を表して座に戻ると、彼は、偉人の脳髄の目方は皆重いものだから、荻村のもかなりあるだろうなどと、声高に話した。
「さすが、何ですな、人格の出来ていた人だけに立派なもんですな、堂々たるもんだ。――先年英国へ行ったとき、シェクスピアの生れた村――ええと――何とかアボンっていったが、あすこへ行って現にシェクスピアが著作したという部屋を見たり、デス・マスクを見たりしましたが、いい記念ですな――」
彼は、思いついたように織田を呼んだ。
「――もちろん、ぬかりはないでしょうが――何ですか、マスクを取らせましたか」
織田は、丁寧に、しかし簡単に答えた。
「とりました」
「ああそれはよかった。もしまだなら、石倉と懇意にしてるから一つ呼んで取らせようと思いましてね――誰にさせました?」
「内海さんです」
祐之助は、
「ふむ、ふむ」
とうなずいた。
「あれならよかろう」
納棺後、祐之助は、中学五年の長男に向って、
「さて、これからが小一郎君のしっかりせんならん時だよ、父さんは偉い人だったが、その跡をさらに立派に立てるのが君の責任だ。へっぽこな親父をもったより骨が折れる。覚悟が出来ているかね?」